夕鵙日記
短歌のblogです。
プロフィール

藪内亮輔

Author:藪内亮輔
短歌をやっていますが詩もすきです。結社「塔」編集委員、京大短歌、歌誌「率」所属。

近作→「歌壇」11月号「天と嘘」12首/角川「短歌」10月号「霊喰ヒM」50首/「文藝春秋」6月号「あまりにも美しい夕焼けが来たときのために」5首/「率」3号「藪内亮輔展~凡才でごめんなさい~」29首

評論近作→「率」3号「短歌にとって瞬間とは何か」/「現代詩手帖」9月号「岡井隆への手紙」/角川「短歌」5月号「斎藤茂吉論」

メール、ご依頼→yabusnake31(あっとまーく)gmail.com



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塔1988-1992
先月末、塔の某作業のために「塔」1988-1992年を読みました。そのついでとしてtwitterに感想のようなものを書いたので、こちらに転載しておきます。(twitterの方では千種創一さんがtogetterにまとめてくださいました。ありがとうございました。)何か問題あればご連絡ください。

***


塔の別動隊(?)として活躍中の京大短歌会もそろそろ一周年になります。ただ今、新入会員を募集中です。お知り合いの方に「これは」と思う人がいられたら、吉川まで紹介して下さい。吉川(塔1988.05編集後記)

歌歴一年のヨシカワさんの評論きゃわわ

日に灼けてくすみし網戸にしんしんと枡目ひとつを埋める星あり/吉川宏志(塔1988.11新樹集)

伯林(ベルリン)にルビふるごとくぼたん雪”僕に恋するひと”を恋する(吉川宏志)を栗木さんが批評している。〈この一首、顫いつきたいほどに美しい上句が、まだるっこしい下句のために台無しになっている。(略)なぜもっと順直に表現し得なかったのかと惜しまれる。〉#塔1988

一方、よく知られた一首はこうなっている。〈伯林(ベルリン)にルビふるごとき夜の雪 教室にまだきみは残れり〉#塔1988

〈ルビふるごとくぼたん雪〉がどちらかというとぼやんとした雰囲気を出しているのに対して、〈ルビふるごとき夜の雪〉は夜という漢字、「き」の脚韻によって凛としたたたずまいを見せている。#塔1988

無駄なことしてるから作業が遅々として進まない。そしてハッシュタグ的なものがちゃんと付けられてない。

@Yabu_Snake 下句が「"僕に恋するひと"を恋する」のものは、京大短歌1号に出ていましたね。歌集では「教室にまだきみは残れり」になっていましたが、栗木さんからの指摘があったのですね。(@mitsumo)

@mitsumo 栗木さんによる評は基本は褒めてるんですけど、ときどき批判という感じです。改作はどれも発見の句を平明な句に変えてますね。冬の字の二つの点を…の歌に対して、〈小細工を弄しないところに作者の大物ぶりがうかがえて頼もしい〉とも…。(笑)(@Yabu_Snake)

@Yabu_Snake でも、かなり先見性のある評ですよね。関係無いですが、吉川さん関係ならこちらの資料もご興味があれば(ご存知かもしれませんが)。 http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~ida/4Hoka/Talgia/HASHIMOTO/salad.htm … http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~ida/4Hoka/Talgia/Talgia20/betonamu6.pdf … 明日の受賞発表号楽しみにしています!(@mitsumo)

@mitsumo 吉川さんらしい文章ですね…一部分見ただけで吉川さんだと分かりました。(ありがとうございます、初めてみました。)受賞号、僕もどきどきです。見てくだされば嬉しいです。(@Yabu_Snake)

こんな歌もありました。〈ワイパーのように黒板消す君が「ヘンリー七世」届かずにいる(吉川宏志)〉資料を紛失したので確かめられないですが、これは〈冬の昼黒板を消すきみの手が「ヘンリー七世」に届かずにいる 〉となっていたと思います。# 塔1988

吉川さんの月詠がえぐいほど上手い歌ばっかりで殆ど作品欄の最初に載せられていてびびる。#塔1990

初恋のまえにやさしき記憶あり橋の裏より螢浮かべば/さるすべり舗道に細き影落とすそのかげに沿い散れる白花/吉川宏志 #塔1990

河野さん登場。〈わずか読めばすぐに疲れて眠りゆく窓の外(と)くらく雨が降るらし〉河野裕子 #塔1990

(二月号田中栄選歌欄トップに載ってました。) #塔1990

『詩法Ⅹ』に坂野信彦が書いている「比喩全廃論」への反発が強い。栗木京子が時評で反論し、池本一郎が評論を書いている。「比喩全廃論」は、短歌という律文は呪術的であるべきであり、比喩・散文という理知的操作は害である、という論らしい。 #塔1990

吉川さんが塔で無双モードに入っている。作品は常に選歌欄の一番目、選歌後記などでも絶賛ばかり。〈最近の作者の歌は際だって内容が濃く冴えている。…今までこの下句の様に生新に言挙げした事があっただろうか。〉霧雨のなかに噴水ひらきおりわれの代わりを誰も生きるな/吉川宏志 #塔1990

続。〈今月は特に。…若さの特権のような勁さは感動的ですらある。…〉竜胆の鉢を胸まで持ちあげて君ならではのほほえみをする/いつもより遠くの駅に呼びだして肩寄せ合えり 微分のさくら/自転車の荷台は銀に濡れており星の密度の濃くなれるころ/吉川宏志 #塔1990

続。最初に挙げた歌の、特に下句、このセリフに宿る野性味は大森静佳の近作への(私の)印象と幾分かぶるところがある。ひとり吉川祭りしてしまってすみません。でも、このあたりの塔誌ではそれぐらい圧倒的な存在感。 #塔1990

そして河野裕子も安定の田中栄欄トップ掲載。歌はあまり引く気にならないが…〈昨夜(よべ)ひと夜体力使えど歌ならず仕様がなきなり梅を見にゆく〉河野裕子 #塔1990

@Yabu_Snake ごく最近青蟬読みましたけど、どうやら青蟬には入ってない歌ばっかりみたいです……なんという秀歌量産…………(@yama_shina)

@yama_shina まじでか……。量産型シャア専用ゲルググ…(@Yabu_Snake)

@hanzodayo 正直すごいっす。こんなの青蟬に入ってたっけ?的な超いい歌が20くらいあります。(@Yabu_Snake)

三月号編集後記、永田さんの文章。〈吉川宏志君は、このところもっとも多くの注目を集めている学生歌人と言えるだろう。…吉川君は、アルバイト代をみんな個人誌出版のために費やしているという。そんな〈馬鹿〉が「塔」にも現れてきたことに、私は大きな期待をかけている。 #塔1990

わああ遂に吉川さん陥落!!岡部文さんに負けて選歌欄二番目! #塔1990

自家製の氷に白き曇りあり紫陽花茂るふるさとの庭/水練(みずね)りの雲が浮かべる六月を母老い我に若き日続く/紫陽花が壜に挿されてかすかなる遠心力は部屋に充ちたり/揚羽蝶水べりに来てはたたけば黒色火薬をまとえるごとし/吉川宏志 #塔1990

僕だけの野心が欲しい きらきらと竜の部品は路にこぼれて/銀紙を落ち葉に混ぜて焚きいたり人に遅れし怒りはさむく/むしろ夢に逐われて生きんさるすべり油照りする幹を立てたり/吉川宏志 一二月。どちらかというと不安定な歌に惹かれる。 #塔1990

@Yabu_Snake 僕だけの野心の歌、ぐいっと刺さりました。歌も作中主体も魅力的に見えるなんて。(@MahiruTamaru)

@MahiruTamaru 野心の歌いいですよね。なまな主体のみえるつぶやき。(@Yabu_Snake)

籠嶋敦子さんの年間回顧。(吉川宏志に対して)〈塔になくてはならぬ人。「恐龍に詳しかりしわが少年期 梅の木の瘤くろぐろと見ゆ」…相聞よりも「存在」を見据えようとする作品の方がいいと思う。〉 #塔1990

この頃の塔では、若手トリオ:吉川宏志・前田康子・田中雅子が注目されているようだ。前田さんの詩時評が毎回おもしろい。評論も多く掲載されている。(田中さんのはあまりないか?) #塔1990

「すずむ氏よ/ひぐら氏よ/生れて来る前に汝らはすでに意味であった」(藤富保男)を前田さんが詩時評で取り上げている。〈改行によって読者をアッと言わせるユーモア、…「すずむ氏」などと言う造語。前者は使えるとしても後者は原則的に歌の世界では使えないであろう。〉 #塔1990

今年の短歌研究新人賞のことを思い出す。一九九一年分へ。 #塔1990

くそわろた #塔1991 YoshikawaK.jpg


「土屋文明先生に、…高安(国世)の死についてもいろいろお話をいたしました。先生は涙ぐんでただ私の申し上げることを聞いてくださいました。「外国でながい留学をしているのだと思っております」と申しますと「ああ、それがいいですよ」となぐさめてくださいました。」(高安和子) #塔1991

一月号。ああ、ついに土屋文明逝去。時評が栗木京子から花山多佳子にバトンタッチ。 #塔1991

地平線しずかに濡らし雨がふる時間のためのじかんは流れ/つややかな昨日と今日に挾まれてせまき土あり百日紅散る/吉川宏志 #塔1991

表紙絵が高安醇さん(国世の三男)に変わる。吉川さんが編集後記で「短歌をやる男には変人が多いので困る」と愚痴っていておもしろい。 #塔1991

花山多佳子時評が手厳しい。今の歌壇にも通ずるだろう。「現代的な素材を修辞的にもハイレベルでこなしているにもかかわらず、かつての誰かの焼き直しのような新人が多いのは、個個の意識の中で、短歌史がますます無縁になってきているからでもあろう。」 #塔1991

栗木京子が評論で穂村弘のサバンナの象のうんこをべた褒め。「はずし」の巧さと「嵌め」の巧さ。 #塔1991

冬の田に一本足で立ちながら噴水のごと鷺ははばたく/我を遠く離れし海でアザラシの睫毛は白く凍りつきたり/紙箱を投げ入れられし焚火の炎(ひ)ひらたくなりてまた燃えあがる/吉川宏志 少し短歌成立技法が安定してきた感触。すなわち私の吉川祭り終焉は近い。

四月号。吉川さんの安定した有名歌が月詠に混ざり始めた。〈「イラク軍の盲撃ち」と言いし…〉〈バグダット夜襲を終えし機の窓に…〉など。〈選択肢いくつも生(は)えし現実は昆虫のごと動きすばやし〉吉川宏志 #塔1991

一九九一年四月、先の吉川の歌もそうだったが、編集後記は湾岸戦争(終結)一色といった具合。のちに歌壇賞を受賞する壇裕子さんが入会、編集に加わっている。 #塔1991

地味に吉川さんが就職してた。歌の安定感との妙な相関性を感じたところで、私の吉川祭を終了したいと思う。 #塔1991

六月。いつの間にか河野さんが無選歌欄に。 #塔1991

何故か九月号の東海支部特集で井辻朱美・荻原裕幸・加藤治郎・穂村弘などなどの豪華散文が載っている。ビジュアルにびびるのが加藤さんで、何というか歌が散文をぱっくりと割っている…。穂村さんの散文はなんとも凄い。「女の子のいじめ方」という題名。 #塔1991

「女の子のいじめ方のなかで一等おもしろいのは、宇宙船の中でいじめるやり方だ。」から始まって、妙にダサい跳ねるような文体で「いじめ方」はすすんでいく。スカート、二十面相の水攻め、ねずみ色の涙。エッセイ集に収録されてるのかな? #塔1991 

@Yabu_Snake それはショートストーリー集の「いじわるな天使」に入っていますね(@YM_WT)

@YM_WT わ、さすが山田さん。ありがとうございます。確かにいじわるですね

@Yabu_Snake シンジケートの同時代評を集めてるので、栗木さんの文章は興味深いです(@YM_WT)

@YM_WT 栗木さんは『シンジケート』、西田政史、『甘藍派宣言』を四ページ評論で援護してますね。(塔1991年3月号「トンネル神話」。)一首二首では底が浅いが、一巻を読み通すうちに穂村ウイルスに感染してとりこになる、などなど。

さっきの穂村さんの文章はショートストーリー集『いじわるな天使』に入っているそうです…。 #塔1991

これだけ別の作業しながら打ち込んでるの俺だけじゃなかろうか。

三月号、真中朋久登場。澤辺元一欄。花山さんの時評がスパイシーだ。 #塔1992

大山令彦「ロシア通信」が始まった。舞台はモスクワ。この企画は遠く離れていまの千種創一「中東通信」につながっているのだろう。 #塔1992

#塔1020 でいま千種創一・吉田恭大が行っている十代二十代特集批評、その特集が五月号より始まった。永田淳・紅が十代、壇裕子・吉川宏志・前田康子・大山令彦・真中朋久・田中雅子が二十代、など。 #塔1992

目が疲れて20cm先のPC画面が見えなくなってきた。めがねめがね…

・真中さんの写真、髭が無くて圧倒的違和感 ・いつの間にか編集長が吉川さんになっている模様 ・吉川さんのエッセイが或る意味おもしろい ・大山さんが映画に出てくるドラキュラみたいなイケメン(迫真)#塔1992

大山さんぜったい伯爵役とかで映画でられるよ…

ピアニストでのちに角川短歌賞をとる河野美砂子さん(いつもお世話になっている)がいつの間にか出詠している。 #塔1992

「確かに、現在の若手の作品に、従来の意味での私性とか個が全く感じられないことがあるのは事実である。けれども、解体されるほどの個とか主体の在り方が、今までの短歌にあっただろうか。」(花山多佳子時評、七月) #塔1992

十二月号、ついに吉川さん前田さんが結婚。花山さんの時評が終了。同時にわたしの打ち込み作業も終了。予定の朝六時前に終えることが出来てほっとしている。 #塔1992

1988ー1992「塔」の印象 ・吉川無双&編集長就任 ・前田さんの詩時評がコンスタントにおもしろかった。 ・とにかく短歌時評がすごかった。栗木京子の怜悧な状況解剖、花山多佳子のスパイシーで苛烈な批判精神。これはみんな読むべき。 #塔1992

二年半のデータ打ち込みで十一時間くらいかかったのかな。

たいへんお騒がせいたしました。これにて塔回顧1988-1992を終了致します。ではでは。 #塔1992

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コメント

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
[2012/12/15 18:30] URL | 株の購入 #- [ 編集 ]


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